「ドイツパンって、どんなパン?」ってよく聞かれることがあります。
慣れている方にとっては極々自然なものですが、初めての方にとってはチョット強烈な印象を与えてしますかも知れません。
一口にドイツパンと言っても、さまざまな種類がありますので、どれをさしてドイツパンとするのか少々難しいのですが、チョットご説明させて下さい。
「じゃ、一体何なの?」とのご質問、ごもっともです。
チョット抽象的ですが、「とっても香ばしく、噛めば噛むほど美味しくなる、とっても魅力的なパン」とお考え下さい。
「ドイツパン=ライ麦パン=黒パン?」でも違います。
彼の地はパンの国とも言われ、街の数だけパンの数があると言ってもよいでしょう。
ですから小麦のパンもちろんあります。とりあえずライ麦を中心としたパンのことを指す事が多いんですが…
また規格に厳格なアチラでは、砂糖や油脂を多く含むものはパンと呼ばれません。法規上も、穀物(小麦、ライ麦、大麦、カラス麦、ヒエ、あわ)を酵母を用いて発酵させ焼成した500g以上の塊を指しますので、アチラの規格に照らすと日本のパンで“パン”と呼べるものは“食パン”ぐらいになるかもしれません。
私共では、数あるドイツパンの中で極一般的なものの極々一部をこのサイトでご紹介させていただいています。
とにかくライ麦のパンでも小麦のパンでも、どれをとっても香ばしく、奥行きの深い味わいを楽しむことが出来ます。お好きな方にとっては、その噛み応えが魅力の一つなのですが、一口目で“硬い!”と敬遠される方がいらっしゃるのも事実です。これは柔らかい食物に慣れた現在の日本人にとって、当然の事かも知れません。
でも、“噛む”ことは健康の第一歩ですよね。
現地の方はこう言います。
「硬てぇパンは、ハラにエェぜ!やわらけぇパンなんて、パンじゃねぇ。そりゃガムだぜ!」と。
日本でこれに似た感覚は、我々がお煎餅に対する思いが近いんじゃないでしょうか。
しっけたおせんべいは美味しいですか?いくら美味しいおせんべいでも、しけていては台無しですよね。ボリボリ、ガリガリやるからお煎餅はより美味しいんですよね。
「でもライ麦のパンは何で、あんなに硬いの?」
それは、穀物の性質の違いからくるものです。
小麦にはグルテンと言う小麦にしか含まれていない特別なタンパク質があります。グルテンは、小麦粉と水が合うと生成され、生地をねるごとにゴムのように粘りが出てきます。このグルテンを上手に作ることにより、発酵によって発生した生地中の空気を外に逃がすことなく風船のように膨らむことが出来ます。これにより、薄い外皮(クラスト)とふっくらと柔らかいあの風味が生まれ、しっとりとしたきめ細かい味わいになります。小麦のパンのポイントは、このグルテンなんです。
これに対しライ麦には、グルテンがありませんから、発酵で発生したガスを保持出来ません。ライ麦だけの生地もいくらねっても、ただベタつくだけで、膨らまそうと思っても膨らみません。当然出来上がったパンも、外皮(クラスト)は厚く、どっしり無骨な出来上がりとなります。
さすがにただこれだけでは美味しくありませんから、他のものを配合していきます。
その一番の要素が、サワー種(ザワータイク)と呼ばれるライ麦を発酵させた発酵生地です。この発酵生地(種)によってライ麦パンの出来が左右されます。発酵生地(種)と言っても、ピンと来ないかも知れませんが、“ぬかどこ”みたいなものとお考え下さい。お漬け物に“ぬかどこ”が不可欠なように、ライ麦パンにもこれは不可欠なのです。米を発酵させるかライ麦を発酵させるかの違いはありますが、どこか共通点がありますね。
「何で、ライ麦パンはすっぱいの?」
これは、前にも出てきました“ぬかどこ”みたいな発酵生地(種)によるものです。
ライ麦パンといっても、ライ麦をこねただけではパンにはなりませんし、酸っぱくもありません。あの独特な味わいは、あらかじめ発酵させた生地(種)がパン生地と一緒になって生まれ、風味豊かライ麦パンの源になります。現地では多くのパン屋さんが、それぞれに昔からの味を引き継ぎ今にいたっています。ですから、この味は“浅漬けの素”等で出来た即席の味ではなく、何十年も継ぎ足して出来た“ぬかどこ”のように味わいに深みと奥行きがあり、ドイツパンの魅力を引き出します。
私共では、滞独時お世話になった親方からこの“ぬかどこ”(発酵種)を譲っていただき、今も大事に継ぎ足しています。
「何で、あちらの人はそんな硬くてすっぱいパンを好んで食べるの?」
それは、長い歴史の中での気候・風土がはぐくんできた食生活からです。
日本でも、おつけもの・味噌・梅干し等々独自の食生活が見受けられますね。元来現地は寒冷地のため、その昔ははライ麦のように寒くても育つ穀物のパンが中心でした。小麦はとても貴重で、なかなか一般の食ではなかったそうです。限られた食材のなかで、ライ麦を自然発酵させて、食に適した形になっていきました。まさに、「ところ変われば、品変わる。」ですね!
これに対し、日本は高温多湿の気候・風土ですから、稲の栽培が適し、お米を中心とした食文化・食習慣が育まれてきました。現在、食の欧米化、肉・脂肪摂取の増加にともない、食のバランスが変化し、本来の日本の食生活も変わりつつあります。
こんな昨今だからこそ、体に優しいドイツパンをオススメします。
「でも、向こうで食べたときは美味しかったけど、コッチじゃ全然美味しくない。」
ごもっともです。同じ味でも、気候・風土が変われば違って感じてしまうでしょう。
その上欧州とコチラでは、小麦・ライ麦の品種が異なり、また粉の規格も違い、性質・風味が全く異なっています。
現在、日本の製パン用小麦は主にアメリカなどからの輸入されています。強力・中力・薄力ということばにも現されるように、どの程度膨らむか(どれだけグルテンをだせるか)により製粉されています。
これに対し、アチラではどれだけ粉の中にミネラルが含まれているかで製粉されます。もとより小麦自体が力度が弱いですから、日本に一般的にある様なふっくら柔らかなパンにはなりません。でも、とても香ばしく風味豊かなのです。「日本でも、その味わいをより多くの皆様に楽しんでいただきたい」と思っております。
例えば、日本の銘柄米の使って、おにぎりを欧州で作った時とコチラ作った時とでは、同じお米でも当然その味わいは異なるでしょう。
また逆に、アチラの現地米を使って、日本の銘柄米と同じ味のおにぎりを作ることは、とても難しいのはご理解頂けると思います。
同じようにパンについても、アチラの味わいを日本でそのまま作り出すことは容易ではありません。
ドイツパンはまだまだ一般的とは言えませんが、あの味わいをより多くの皆様に現地のままにお届けする事を私共は第一に考えています。
ですから、日本で一般的に出回っているものとは“チョット違う?”とお思いになる方もいらっしゃると思います。
気候・風土・文化・習慣・食生活が全く異なる日本で、現地の味をそのままお届けすることに異を唱える方もいらっしゃいますが、食が多様化するこの日本でドイツパンの本来の姿“origin”をお伝えする事が私共の務めと考えております。
その為には、ただレシピだけを真似するのではなく、欧州の気候・風土・文化・習慣・食生活、また食生活全体の中でのパン等を理解していく事が必要かと思います。